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を考慮に入れた伝播解析理論(RPG理論など)の検証が行われた。(詳細は7章参照)
2.1.3 大型構遣モデルによる疲労き裂伝播試験
大型構造モデルでは、基礎試験片に比べて溶接残留応力の影響やき裂進展に伴う応力再配分効果が、より実船部材に近い形で内在している。従って、大型構造モデル疲労試験によって得られたき裂成長データは、本SRで開発した疲労き裂伝播解析手法(各種影響因子の考慮法を含む)による計算推定値と比較照合することにより、手法精度の検証に利用することができる。
大型構造モデルA(3ロンジモデル)とモデルB(1ロンジモデル)を製作準備し、一定繰返し荷重下でのき裂伝播試験を行った。解析法の精度検証の外に、構造モデルBでは圧縮荷重下のき裂進展の再現、構造モデルAではロンジ材の機能喪失に至る過程の再現を図った。例として、構造モデルAの形状寸法を図2−3に示し、得られたき裂成長データの例を計算推定値と併せて図2−4に示している。
2.2 新しい伝播解析手法の整備のために
2.2.1 伝播解析における初期き裂の設定
前述のように、(2−2)式右辺積分の下限値aOの設定には、検査結果と関連付ける等々幾つかの場合がある。
発生寿命を含めて全疲労寿命を伝播寿命だけで置き換える簡便かつ実用的な手法(6章参照)では、疲労強度SN線図と矛盾なく説明できる条件から逆算式に初期き裂サイズaoが決められる。そこで、簡便法の設定を有効なものとする観点から、微小き裂段階でのき裂寸法やアスペクト比の変化、或いは複数き裂の合体成長の形態などを調べた。切欠きを有する小型疲労試験片(図2−5a参照)を用いて、破面にき裂先端形状の痕跡を残すための工夫を加えて実験した(ビーチマーク法、破面酸化法、インク浸透法)。
その結果、図2−5bに掲げる初期段階のき裂形態変化データが得られた。
2.2.2 き裂先端開閉口の取扱い
パリス則では、2.1.1で述べたように、き裂先端の口開き状態を前提としている。
この前提ではElberによるき裂先端開閉口の効果を無視しており、同じ応力や形状条件の下で大き目の伝播速度を与える。き裂先端開閉口の効果とは、疲労き裂伝播に有効な応力成分は全作用応力幅の中でき裂先端が開いている部分だけである、というものである。つまり、(2−3)式で定義される開口比Uをもとに、有効応力拡大係数範囲△Keffとして(2−4)式を定め、(2−1)式中の△Kに代えて△Keffを適用することになる。

 

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この考え方は、図2−6に示されるように、作用応力σと疲労き裂先端付近でのき裂を跨ぐ伸びδを縦横軸値として繰返しサイクル中の変化を描かせた結果から導かれた。き裂先端開閉口を考慮に入れることで、複雑多岐にわたる疲労影響因子が及ぼす効果について統一的に解釈することができると考えられている。
豊貞によるRPG理論は、有力なき裂先端開閉口の取扱い法であり、Dugdaleモデルによるき裂進展シミュレーションソフトが開発された(詳細は7章参照)。2.1.2節の小型試験片によるき裂伝播試験

 

 

 

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